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最高裁判所第二小法廷 昭和40年(オ)583号 判決 1967年10月27日

上告人

前田匡子

右訴訟代理人

鈴木敏夫

青山義武

被上告人

竹内義男

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人鈴木敏夫の上告理由一〜八について<省略>

上告代理人青山義武の上告理由第一点について。

原判決が、その挙示の証拠により、適法と認定したところによると、本件抵当権設定契約は、昭和三三年五月堀内嘉幸が上告人の印顆をほしいままに使用して、被上告人と締結し、かつ、抵当権設定登記申請手続をして、本件抵当権設定登記をしたが、同年一〇月はじめ、被上告人、上告人らが集つて協議の結果、上告人らにおいて被上告人ないし上松木材事業協同組合に対し金四八〇万円の支払義務の存することを認め、その支払のないときは右堀内が上告人らに無断で被上告人のために設定した本件抵当権設定契約を認めこれにもとづいて実行されても異議がないことを約して、上告人は堀内のその無権代理行為を追認した旨の原審の事実判断は正当としてこれを是認することができる。

そして、本人名義の偽造文書によつて無権代理人が抵当権設定登記手続をし、その旨の登記がされたとしても、本人たる登記義務者において、その抵当権設定行為を追認したことにより、右抵当権の設定登記の記載が実体上権利関係と符合するようになつたときには、その結果、右登記義務者は、その登記をすることを拒みうるような事情がなくなつたものというべきであつて、その抵当権の設定登記の無効を主張することができないと解するのが相当である。

したがつて、前記の事実関係のもとにおいて、上告人は本件抵当権の設定登記を抹消しえない旨判示した原判決の結論は、結局において、正当である。

原判決には所論のような違法はなく、所論は採用しがたい。

同第二点について。

原判決の認定した事実の肯認しうることは、上告代理人鈴木敏夫の上告理由に対する判断において示したとおりであり、原判決には所論のような違法はなく、所論は、結局、原審の専権に属する証拠の取捨・選択、事実の認定を非難するに帰し採用しがたい。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)

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